[E]環境
Environment

アルコニックスの環境方針

非鉄金属という地球資源を取扱う当社グループにおいて、環境問題は経営上の重要課題の一つです。
当社グループは中長期のありたい姿として、「非鉄金属業界の総合ソリューションプロバイダー」を掲げています。
創業以来、注力してきた金属リサイクル事業を拡張し、グループ内で資源の回収、生産、卸売が可能な仕組みを構築することで、循環型社会の実現へ貢献していきます。

アルコニックスでは、地球環境問題を経営上の重要課題の一つと位置づけ、あらゆる活動を通じて地球環境の保全と改善に努め、次の世代に豊かな地球を引き継ぐことを目指しています。
その指針として以下の環境方針を定めています。

アルコニックス 環境方針

  • 環境負荷の軽減

    地球温暖化、オゾン層破壊、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、悪臭などの環境問題の改善に貢献する。

  • 循環型事業・省エネルギー事業の促進

    枯渇が懸念される資源のリデュース・リサイクル事業、エネルギー使用の低減に貢献する材料・製品の取扱いを促進し、環境問題の改善に貢献する。

  • 環境関連諸法規等の遵守

    環境関連法規や条例を遵守する。また、受け入れを同意した環境関連の取り決めがある場合は、それを遵守する。

  • 環境管理体制の充実

    環境管理体制を整備し、環境マネジメントシステムの継続的改善に努め、全社員が地球環境問題への深い認識を持ったうえで企業活動を進めるよう教育啓発活動を行い、地球環境保全活動の一層の充実を図る。

気候変動への取組み

GHG排出量削減に向けて

当社グループのGHGの排出を分析した結果、国内の場合約8割が電力によるGHGの排出であることが分かりました。
この分析結果を受けて、アルコニックスグループはカーボンニュートラルな社会の構築に向けて、全オフィス・工場の消費電力の再生可能エネルギーへの転換や生産効率化による化石燃料使用の抑制、残存排出量のカーボンオフセットなど、積極的に取組みを進めていきます。

GHG排出量

  • データは2023年3月期
  • t-CO₂=二酸化炭素排出量換算(エネルギー使用からのGHGの発生量の二酸化炭素換算値)
  • 計測範囲:アルコニックス単体、国内グループ会社(15社)で海外拠点・工場は除外(各社よりエネルギー使用量をヒアリングし、アルコニックス本社にて合算)
SDGsロゴ(SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS)

持続可能な開発目標「SDGs」の達成に向けての事業活動の一例は「グループ会社の地域貢献」をご覧ください

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への取り組み

当社は、気候変動が当社グループの事業に及ぼす影響の大きさを認識し、気候変動リスク・機会を分析し、その対応策を構築すること(以下、気候変動課題とする)は、経営の重要課題であると考えています。
当社では、TCFDの提言に対して、2022年3月期にシナリオ分析を初めて行い、2024年3月期に「賛同」を表明しました。この時のシナリオ分析においては本社の取引を中心に行いましたが、これからはさらにその分析の対象範囲を拡げて、影響測定の精度を高める必要があり、より精度の高い分析、対応策を導き出すために関連する部署も新たに参画して、議論と分析を行っていきます。

GHG/TCFD ワーキンググループ(WG)

検討対象

事業範囲:
当社の注力3分野を対象とし、本社単体事業及び海外事業、子会社を含むグループ全事業に徐々に拡大する。

情報開示と課題:
TCFD提言に基づく4要素11項目で整理していく。財務インパクト評価や対応策の洗練度を上げていく。

TCFDの提言に沿った気候変動関連情報

グローバルで事業を展開しているアルコニックスグループは、気候変動が与える影響の大きさを認識し、当社のサステナビリティ経営における重要課題の一つとしています。現代の国際社会においては、気候変動や深刻化する社会・環境問題等、私たちを取り巻く環境はますます多様化・複雑化しています。こうした課題を認識し、主体的かつ使命感を持って企業活動を行っていくことが、国際社会の課題解決に資するとともに、当社グループの成長にもつながると考えています。

当社は、2003年に定めた「環境方針」にもとづいて環境保全活動を行ってきました。2022年5月には、東証プライム企業として中長期的な企業価値向上の基礎を築くべく、サステイナビリティ基本方針を制定し、マテリアリティを抽出しました。TCFDの提言に対して、今年度「賛同」を表明し、2022年3月期に試みたシナリオ分析の対象を拡げ、TCFD提言に沿った開示を進めており、今後も気候変動に関する財務インパクト及びその対応について引き続き開示を行っていきます。

ガバナンス

a)気候関連のリスク及び機会についての取締役会による監視体制

ESG課題についての具体的な企画や施策案について、サステナビリティ推進室がサステナビリティ委員会に上申し、検討・審議された活動内容について経営会議を通じて取締役会が報告を受け、活動の是非、進捗についてモニタリング・監督しています。

b)気候関連のリスク及び機会を評価・管理する上での経営者の役割

取締役会は、サステナビリティ委員会(委員長:取締役常務執行役員CSO)に気候関連課題を担当させ、委員会はサステナビリティ推進室とGHG/TCFD WGに指示して気候関連課題の評価と対応策の取りまとめを行い、経営会議・取締役会に報告します。
取締役会は、委員会から気候関連課題の評価や目標管理についての報告を受け、経営戦略の策定等の総合的な意思決定を行い、指示・監督します。なおCGコード*補充原則2-3①を十分に意識し、PDCAを確実に回していきます。
* コーポレートガバナンス・コードの略。

リスク管理

a)組織が気候関連リスクを識別・評価するプロセス

気候関連リスクは、グループ全体の事業活動及び提供する製品及びサービスに対する現行規制、新たな規制、技術、法制、市場、多様な物理変化といったリスクを総じて識別されます。当社グループの場合、多種多様で細かな取引が多く、それらの蓄積で事業を構築する業態であり、検証すべき事業範囲の絞り込みが難しいため、検討を重ねた上で注力3分野(自動車、半導体、電子材料・電子部品)向け取引を対象として定めました。本社取引からグループ全体にまで範囲を徐々に拡げながら、サステナビリティ推進室とGHG/TCFDWGにより想定されるリスクと機会を抽出し、財務インパクトについて評価していきます。気候変動に関連する規則については、国際条約、関連法令、条例に加えてCGコードや開示ルール等を対象に、サステナビリティ推進室とGHG/TCFD WGが定期的に情報収集し、内容を確認します。

b)組織が気候関連リスクを管理するプロセス

気候変動リスクの対応計画の策定は、基本的にはサステナビリティ推進室とGHG/TCFD WGが担当します。識別・評価されたリスクと対応策については、サステナビリティ委員会が取締役会に報告し、承認を得ます。

c)総合的リスク管理における気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセスの位置づけ

現在、当社の総合的リスク管理は、リスク管理部が事務局となるリスク管理委員会が対応しています。リスクの識別・評価については経営に与える影響が大きいと考えられるリスクを重大リスクとし、当社単体やグループ会社におけるリスクアセスメント結果や社会情勢、災害等による物理リスクを踏まえ、重大リスクを定めた上で管理を行っています。
気候変動課題は、リスク管理委員会では現在議論されておりませんが、将来はサステナビリティ委員会と連携し、リスク管理委員会においても重大リスクの一つとして包括的にリスクを検討・議論していきます。

戦略

a)組織が短期・中期・長期の気候関連のリスク及び機会を識別するプロセス

組織の時間軸(短期・中期・長期の視野)におけるリスクと機会の検討状況

2023年5月に公表済みの中期経営計画2023にて示した計画の時間軸との整合性を図り、気候関連課題におけるリスクと機会についてサステナビリティ推進室とGHG/TCFDWG、さらには関連部署並びに関係会社とともに検討を行っていきます。

ロードマップ

組織に重要な財務的影響を与えるリスクと機会を特定するプロセス

当社は、シナリオ分析の実施に際して、主にサステナビリティ推進室とGHG/TCFD WGが関連部署の支援のもとで気候変動に関する重要なリスクと機会の洗い出しを行い、財務面のインパクト評価と対応策を検討しています。
今後のシナリオ分析では、分析の対象範囲を拡大し、シナリオ分析の精度を上げていきます。

b)気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響

c)複数の気候関連シナリオに基づく検討を踏まえた組織の戦略のレジリエンス

2023年3月期の事業機会の検討では本社関連部署の担当者が参画し、シナリオ分析においては、具体的に当社の注力3分野に属する様々な取引を対象にして検討した結果、事業の成長性と強靭性が実証され、財務上影響の大きい気候関連課題は見つかりませんでした。

指標と目標

a)戦略とリスク管理プロセスに即して気候関連のリスク及び機会を評価する際に用いる指標

当社はM&Aを経営戦略としていますが、その副産物として当社グループ由来のGHG排出量が非連続的に増加する懸念があります。
そこで、再生可能エネルギーの導入比率や省エネルギー設備への投資額、脱炭素貢献型事業の売上高等、当社の企業価値向上と実効的なGHG排出量削減の両方に資する有効なKPIの設定に向けて検討していきます。

b)Scope1、Scope2及びScope3の温室効果ガス(GHG)排出量

c)組織が気候関連リスク及び機会を管理するために用いる目標、及び目標に対する実績

気候変動対策に関わる当社グループの方針を固めるためにESGに関わる基礎データの収集は、環境省「エコアクション21ガイドライン2017年版」の別表「環境への負荷の自己チェック表ver.1.1」をベースとした調査により、GHG排出量をはじめとする環境負荷の集計を行っています。現在の対象はアルコニックス本支店並びに国内グループ会社(15社)で海外拠点・工場は除外としており、また、Scope3のGHG排出量の算定には着手しておりませんが、主要事業領域である注力3分野の対象範囲を拡大するとともにScope3の排出量算定にも着手し、シナリオ分析の精度を上げていきます。

カーボンニュートラル取組の削減量イメージ(18,284t-CO2を100とした場合)

TCFDシナリオ分析

地球の資源を取扱う当社グループは、気候変動という予測困難で不確実な事象に関するリスクと機会を特定し、それらの機会やリスクがどのように当社グループへ影響を及ぼし得るのかを確認するために、TCFDの枠組みに基づき、当社の注力領域である自動車関連取引についてシナリオ分析を実施しました。今後は他の注力領域においてもシナリオ分析を実施し、当社グループにおけるリスクと機会を確認していきます。

気候変動の影響分析

当社はTCFDの枠組みに基づき、注力領域の自動車関連取引についてシナリオ分析を実施。
分析の結果、EV化の進展に伴い、2030年までには、両シナリオ下でも自動車関連取扱高が対2021年3月期(2020年度)比2倍近くに成長する試算。

シナリオ分析対象

アルコニックス単体の自動車関連取引(単体の全取扱高の4割強)⇒EV関連取引と内燃機関関連取引に分解して検証

使用シナリオ

IEA “Net Zero by 2050 Scenario” “Stated Policies Scenario”

前者は2050年GHG排出量正味ゼロ達成シナリオ(平均気温上昇が1.5℃に留まるシナリオ)
後者は各国の現行環境政策の延長線上のシナリオ(平均気温が2.7℃ほど上昇するシナリオ)

分析結果

1.5℃シナリオ

  • 内燃機関関連の取引の取扱高は2050年までに9割減少
  • EV関連取引の取扱高は5倍に増加
取扱高推移予測(2020年度の両取引の総取扱高を1とする)
取扱高推移予測

2.7℃シナリオ

  • 内燃機関関連の取引の取扱高は2050年までに1.4倍に増加
  • EV関連取引の取扱高は4倍に増加
取扱高推移予測(2020年度の両取引の総取扱高を1とする)
取扱高推移予測

両シナリオともに当社の成長性を示し、気候変動に対する当社の強靭性を実証

TCFDシナリオ分析

TCFDシナリオ分析の詳細

今後の課題

  • シナリオ分析の対象範囲をグループ全体へ拡張
  • 抽出したリスクと機会に対する戦略の実践
  • EV化以外のシナリオ検討

イニシアティブへの参画

当社は2022年から国際的な環境NGOである「CDP」からの調査に回答しています。
2023年度は気候変動質問書へ回答し、スコアを受領しています。

世界中の機関投資家や購買企業を代表して企業の環境情報開示を求めるNGOで、ESG情報開示の「E」に関するグローバルスタンダードです。

CDP気候変動質問書2023回答

CDP気候変動2023スコア(英文)

循環型社会実現への貢献

当社の主力商材であるアルミニウムや銅は、人々の生活に欠かせない身近な存在です。また、近年では自動車の燃費向上やEV化を推進するための軽量化に欠かせない素材として、重要度が高まっています。新たな産業を予測し、新事業の開発と私たちのプレゼンスを創出し続けるデザイナーであるアルコニックスは、アルミニウム・銅を取扱う企業として、それらの安定供給を実現しながら、精製段階における環境負荷の低減に取り組むことが当社の使命の一つであり、社会に貢献する手段です。

アルミニウム・銅のリサイクルとアルコニックスの関わり

当社グループは、貴重な地球資源であるアルミニウム・銅を取扱う企業として責任を果たすべく、アルミニウム・銅のリサイクル活動に主体的に関わり、使用済み素材を再び市場に提供し、活かす取組みを推進しています。
環境負荷低減を実現する自動車の軽量化や、需要が拡大している半導体や電子材料部品、製品にとって、アルミニウム・銅は欠かすことのできない素材です。特にアルミニウムは強度が高く軽量であることから、今後様々な用途で必要になる素材です。一方で、環境保護や資源保護のため、アルミニウム・銅の採掘量は年々縮小し、また鉱石の品位の低下傾向が見られるため、そのほとんどを海外からの輸入に依存している日本においては、いかにして需要に応じて安定的に供給するかが問題となっています。その解決策として注目されるのが、使用後のアルミ・銅スクラップの再利用です。

リサイクルで実現する社会貢献

スクラップの溶解再生は、新地金を鉱物のボーキサイトから抽出精製する場合に比べ、排出するCO₂の排出量を約30分の1程度に抑えられるため、環境負荷を大きく低減することができます。また当社は、リサイクル工程で使用される燃料の再生重油の販売も行っており、CO₂排出量削減と廃棄物削減という両面から持続可能な資源の利用に貢献しています。さらに、近年では、宅配ボックスにもそのリサイクル素材が使用されています。これは再配達で発生する輸送コストやCO₂排出量の削減にもつながり、これからの時代に欠かせない非常に意義のある取組みです。

アルコニックスの目指す姿

脱炭素やIoT化の進展に伴い、枯渇性の資源である非鉄金属の再生使用のニーズは今後ますます高まると予想されます。資源の輸入国である日本においては、その重要性は特に高まります。
そこで、創業以来当社が培った非鉄金属リサイクル事業の知見と実績を活かし、非鉄金属の「持続可能な供給」を実現し、社会的価値と経済的価値の共創を目指します。
具体的には、当社グループは、非鉄金属の素材・部品の生産から卸売、さらにリサイクル事業による回収までを一括で担うことで、グループ内で資源が循環する「クローズド・リサイクル」の実現を目指します。その仕組みの構築に向けて、更なるM&A・設備投資による対応機能の拡大や、コーポレートベンチャーキャピタルを活用した新技術の取り込みを図る、「補完型投資」を強化します。
資源再生事業の裾野をさらに広げて、当社は社会全体の循環型経済の構築に寄与していきます。

目指す姿に向けてグループ全体でサステナブルで網羅的な資源供給網を構築

EV事業における将来のアルコニックスの姿 アルミニウム・銅のみならず、ハイテク機器に不可欠なレアメタル・レアアースの再生にも貢献