洋上風力発電+水素!新分野へ切り込むチタン・新素材部

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アルコニックスは、総合商社の旧 日商岩井の非鉄金属部門が独立して発展してきた会社です。ALCONIXとの社名は、アルミ(ALuminum)、銅(COpper)、ニッケル(NIckel)に、「未来への展開」を示すXをつなげました。原材料を取り扱う「商社流通」機能に加え、製品を生み出す「製造」機能を持つことで新たな価値を創造。電気自動車(EV)や水素で走る燃料電池車(FCV)、さらに電池や半導体などお客様の未来の製品を支えるため、アルコニックスは世界から集めた高機能な素材を最適な形に加工してお届けしています。

アルコニックスの幅広い事業活動を連載コラムでご紹介する”Dreamer’s Voice”では、コーポレートスローガンである「夢みた未来を描く」を実践する現場の姿をご覧いただけます。第1回は、新たな分野へと切り込んでいる「チタン・新素材部」をご紹介します。

目次

    チタンは何から作っている?

    鉄は鉄鉱石、銅は銅鉱石を高温で溶かして作ります。ではチタンは? チタン鉱石があるのでしょうか? 軽くて強い金属として有名になったチタンですが、私たちはチタンのことをよく知りません。

    「チタンの原料は、アフリカやオーストラリアで採掘している『ルチル』という鉱石などです。『金紅石』とも呼ばれる美しい石に含まれるチタン純分を複雑な化学反応によって取り出します。地球上のチタン埋蔵量自体は多いのですが、そのほとんどが酸化チタンとして顔料などに使われます。金属のチタンとして世の中に出るのはチタン市場全体のたった5%なんですよ」。

    こう語るのはチタン・新素材部の大倉健一郎部長。大倉部長は2001年にアルコニックスに入社、2023年10月に44歳で部長に就任しました。ルチルに始まりさまざまな応用分野まで、チタンを熟知しています。

    私たちの生活のなかでも、メガネのフレームなどに使われ一般的になってきました。
    チタンの特長は大きく4つ。

    • 軽くて強い
    • 腐食しにくい
    • 人の身体に優しい
    • 耐熱性に優れている

    との特長を活かして応用分野が広がっています。

    チタンの最大の特長は、鉄の2倍の強さを持ちながら、比重(1立法センチメートルあたりのグラム数)が4.51と鉄の6割弱の軽さであること。その特長を生かし軽さと強さが求められる航空機や、ゴルフクラブなどのスポーツ用品に使われています。また、「耐腐食性」が高いことから化学や熱交換器などの一般産業の分野でもチタンが活用されています。

    さらにチタンは、人間の身体に優しい「生体適合性」に優れています。人体への拒否反応が少ないことから、骨折手術などで身体の中に埋め込むインプラントなどの医療機器は多くがチタン製。大倉部長は「人体の骨折手術だけでなく、ギリシャ・アクロポリスの神殿の柱が折れないように中で支えているのもアルコニックスが納入したチタンです。世界遺産ですからね、感慨深い仕事でした」と微笑みます。

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    チタンの未来を語る大倉部長

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    チタン・新素材部は大倉部長を含め5名からなる少数精鋭の部門
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    「生体適合性」に優れ医療用途に多く使われるチタン製品

    あの超高級スポーツカーにもアルコニックスのチタンが使われている

    アルコニックスは、1981年に旧日商岩井が非鉄金属部門を別会社化し、2001年に経営陣による買収(MBO=マネジメント・バイ・アウト)で独立しました。アルミや銅といった発足当初からの「祖業」を引き継ぐ「軽金属・銅製品・チタン本部」は3つの部で構成。その中でチタン・新素材部は、ALCONIXの「X」=「未来への展開」を担う部の一つとして、チタンという比較的新しい素材を担当し、新規分野の開拓に取り組んできました。

    ルチルは、チタンメーカーによって「スポンジチタン」という海綿体のような中間体に加工され、これを溶かしてチタンのインゴットを成形、さらに金属材料メーカーによって板や棒などの「展伸材」に加工されます。これら日本メーカーの材料は品質が高く、納期や配送ルートを管理するアルコニックスの商社流通機能を含めて、海外の顧客から高い評価を得ています。

    代表的な顧客としてスウェーデンの熱交換器メーカーやスロベニアの排気管メーカーにチタンを納入。スロベニアの排気管とは、高級スポーツカーに採用されていることで有名なスポーツマフラーメーカーの「AKRAPOVIČ(アクラポビッチ)」です。これからも、商材の競争力と長年の取引経験で培った「目利き力」を活かし、チタン・新素材部は未来への更なる発展を模索しております。

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    有名なスポーツマフラーメーカーの「AKRAPOVIČ(アクラポビッチ)」にチタンを納入

    アルコニックスグループだからこそ生まれるシナジー

    未来に向けた取組としてチタン・新素材部は、「水素」と「医療」の分野の開拓にも積極的に取り組んでいます。そこで力を発揮するのが、グループ企業や専門性の高い外部企業との連携です。

    「医療」分野について、生体適合性の高いチタンを医療の現場で活用するには、医師のニーズや新たな医療技術への対応が必要です。その為には、原材料の提供だけでなく部品や製品を自前で「製造」する能力が重要です。

    アルコニックスでは2009年ごろから積極的なM&A戦略を推進し、卸・流通だけでなく機械・金属加工などの中堅・中小企業をグループに加えてきました。

    チタン・新素材部でも、2013年にグループ入りした大羽精研(愛知県)と医療分野開拓のために連携。アルコニックスが持つチタン材料のノウハウと、大羽精研の精密な切削・研削技術の融合を進め、医療関係者と全国の医療機器メーカーが集まる専門展示会「MEDTECジャパン」にも共同出展しました。2024年7月にグループ入りした坂本電機製作所(福岡県)のアルミやチタンの高精度切削加工技術ともシナジーが生まれそうです。

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    グループ会社の大羽精研と共同出展した「MEDTECジャパン」ブース

    水素化社会、その先の未来へ

    もう一つの開拓分野「水素」は、未来への挑戦です。水素は燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出せず、石油に代わるクリーンエネルギーとして注目されます。理科の実験で習った「水の電気分解」を覚えていますか? 水から取り出せる水素は無尽蔵のエネルギー。電気分解の逆の反応で、燃やさずに水素から直接発電する「燃料電池(FC)」も実用化が進んできました。

    水を電気分解するにしても、水素から電気を取り出すにしても、効率を左右するのは電極の材質です。世界で開発競争が展開され、現在注目されているのがチタンやニッケル。実用化が始まった燃料電池車の心臓部にもチタンが使われています。

    アルコニックスでは、すでに欧州の水電解装置メーカーのパイロットプラント向けにチタンとニッケルのサンプル提供を始めました。欧州では洋上風力発電設備の中でクリーン電力によって水素を作るプロジェクトが複数動き出しています。

    大倉部長は「フランスの作家ジュール・ヴェルヌは、1874年の冒険小説『神秘の島』の中で『水は必ずやある日燃料として利用されるだろう』と予言しました。150年前に描かれた夢の実現のために私たちは原材料を供給し、その先の未来に携わりたい」と夢みた未来を描いています。

    今後も引き続きオウンドメディアでアルコニックスの事業活動をご紹介してまいりますのでぜひご覧ください。

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    洋上風力発電

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    Supported by 日刊工業新聞社