クルマの試作に製造機能まで提供する製品プロジェクト部

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商社が製造機能を持つとどうなる?―。アルコニックスの幅広い事業活動を連載コラムでご紹介する”Dreamer’s Voice”では、コーポレートスローガン「夢みた未来を描く」を実践する現場の姿をご紹介しています。第2回は、自動車メーカーなど顧客のものづくりに密着し、自らも製造機能を提供する「製品プロジェクト部」です。

目次

    ロードスターの軽量化にアルミで貢献


    「マツダ・ロードスター」は1989年に初代が登場、小型の2人乗りオープンスポーツカーとして世界に愛され、グローバルで累計100万台以上の販売実績を持つ。コンパクトで軽い車体を生かした軽快な走り、屋根が開く爽快感に加え、燃費の良さや十分な大きさのトランクといった実用性を備え、カーマニアだけでなく子供が独立した大人の夫婦など購入層は幅広い。その最大の特徴である「軽さ」の実現には、さまざまな部分に多用されたアルミ部品が貢献している。
    特に現行の4代目モデルは、ロードスターの長い歴史のなかで改めて車体の軽量化を徹底し、さまざまな安全装備を備えながら車両重量1トンを切ることに成功した。1グラム単位で車体の軽量化に取り組んだマツダ開発陣の仕事を、アルコニックスのメンバーも陰で支えた。現在、製品プロジェクト部を指揮する國光浩平部長は「4代目ロードスター開発のお手伝いは、思い出深い仕事です」と振り返る。Mazda1.jpgマツダ・ロードスター4代目モデル

    「顧客」に寄り添い課題解決に取組む

    製品プロジェクト部は、自動車メーカーなど「顧客」を担当するセクションで、「商材」を担当する部署が多い商社の組織図のなかではユニークな存在。軽金属・銅製品・チタン本部に属し、本部の非鉄金属材料をすべて扱い、顧客が求めればレアアースなど他の本部の商品も取り継ぐことができ、アルコニックスの中核を担うチームともいえる。
    担当する顧客企業は自動車、航空機、建材など約300社で、試作開発段階の案件が多い。顧客企業のなかで技術者が描いた設計図を元に部品を試作し、テストし、量産準備を整える過程をサポートしている。このため単に素材を納入するだけでなく、部品の加工に関する技術的な要望とセットになった引き合いに対応しているのが特徴だ。例えばロードスターのシートの後ろには、万一の横転時に乗員を守る乗員保護部材が付いている。この部品も軽量化のためオールアルミとなっており、複雑な曲げ加工を含む部材で構成されている。アルミは鋭角に曲げると伸びる側に亀裂が入りやすい。「協力メーカー様のサポートのもと、曲げ加工と精度の両立、更には工程適正化によるコスト競争力が実現できました。」(國光部長)という。


    Image (27).jpg素材や加工技術に関する知見が豊富な國光部長


    Mazda2.jpg

    マツダ・ロードスター(乗員保護部材)

    大手と中小をつなぎ、製造業の集積を「見える化」

    アルコニックスは材料販売だけでなく、戦略的に「製造」の分野へと事業を拡大している。M&A戦略によりニッチで技術力のある製造業をグループ会社化し、「商社機能」の目利き力に「製造機能」の技術力を融合した付加価値の高いビジネスを目指す。2009年にグループ化した大川電機製作所は切削、2015年の東海溶業は溶接・溶射など加工技術の種類を増やし、2013年にグループ化した大羽精研は自動車部品が得意、2024年にグループ化した坂本電機製作所は半導体製造装置向け部品に強いなど対応する市場の幅も広げている。
    さらに製品プロジェクト部は自社のグループ企業だけでなく、全国100社以上の協力企業リストを持ち、顧客のものづくりに関するあらゆる要望に即応している。顧客の要望はまさにさまざまだ。
    『部品の表面に何か化学的な膜ができているようだ。膜を除去できないか?』と相談されれば、金属を必ず洗浄してから加工しているメッキの町工場を連れていく。
    『複雑な曲面形状に、狙った角度で穴を開けたい』と言われれば、作業台を自由に傾けられる最新の5軸加工マシニングセンタを保有する町工場を紹介する。
    メーカーの新製品開発はタイトなスケジュールで進む。試作の過程で『3000円のもの1個だけなのだが、3日以内にほしい。本当にやってくれるの?』というSOSにも、製品プロジェクト部は小回りをきかせて対応する。日本の中小製造業は全国に約17万社。それぞれ専門性の高い技術を持つ町工場の集積が日本の強みだ。アルコニックスは顧客企業に対しては集積の強みを活用できるよう技術を『見える化』し、中小企業に対しては営業力を補完し大手企業とつなぐ役割を果たしている。


    AdobeStock_129013389.jpeg5軸加工機

    顧客が求めるものを総合的に提供するソリューションプロバイダー

    こうした現場での対応一つひとつが経験・ノウハウとして蓄積され、取引先との信頼関係のネットワークは、ものづくりの新たな技術情報の収集につながる。従来の加工方法に代わり劇的にコストを引き下げる新工法の情報は、材料販売の有力な武器となる。アルミは優れた特性を持つが、材料としての価格は鉄の数倍。スポーツカーや航空機、バッテリーが重い電気自動車(EV)など軽量化を必要とする分野は広がっているが、押出し加工の中空材で鉄では難しい形状を作るなど、コストを抑えながらアルミの強みを生かす提案とセットにして初めて採用が決まる。
    アルコニックスグループでは、非鉄金属の素材販売だけでなく情報や部品の製造、さらにリサイクルまで顧客が求めるものを総合的に提供する役割を「ソリューションプロバイダー」と名付け、グループ内で資源が循環する仕組みを構築している。「製品プロジェクト部は、産業界の変化に合わせて常に新しい仕事を作っていく必要があります。売り物になる情報を探し、営業会議で共有し、皆でサポートして、お客様に提案する。新しいことにチャレンジし、失敗しても批判しない。それが私たちの仕事の進め方です」(同)と話す。
    現行型ロードスターは3代目よりアルミの適用部分を広げ、乗員保護部材のほかフロントフェンダー、バンパーを支える構造材などに広く採用した。4代目はフルモデルチェンジから9年経ったいまも、世界中で愛され、高い販売実績を維持している。その軽量化のノウハウは次世代のクルマ作りにも引き継がれていくだろう。

    Supported by 日刊工業新聞社

    AdobeStock_1005351863.jpeg

    アルミインゴット

    AdobeStock_555346292_Editorial_Use_Only.jpegJIS Q 9100:2016を取得済。登録範囲:航空宇宙産業向けアルミニウム及びマグネシウムの鋳造品、鍛造品、押出品、圧延品、及び機械加工品の販売