1951年の創業以来黒字経営、半導体・航空宇宙・防衛領域で存在感を増す業界のフロントランナー 人材交流でグループシナジーの追求と持続的成長を目指す| 株式会社大川電機製作所代表取締役社長 小池 進

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半導体・航空宇宙・防衛領域で存在感を増し 「付加価値生産性」の向上でさらなる高みを目指す

アルコニックスグループは、非鉄金属の専門商社として培った目利き力を生かし、さらなる収益拡大や業容の多様化を求めて、M&Aを通じて製造業へ進出してきました。

1951年創業の株式会社大川電機製作所は、福島県内に工場を持ち、精密機械部品の切削加工のオールラウンダーとして、創業から70年以上にわたり黒字経営を続ける金属精密加工メーカーです。2009年にアルコニックスとして初めてとなる製造業のM&Aでグループに入り、安定した資本と信頼基盤のもとで成長投資を加速させてきました。

グループ入りしたことで、世の中の変化に合わせてグループシナジーを追求し、事業ポートフォリオを大きく変化、現在は半導体関連、および航空宇宙・防衛関連をポートフォリオの中心に据え、M&A後に売上高を伸ばしています。今後大きく成長が見込める、半導体製造装置や航空宇宙・防衛向けに高精度な加工が求められる市場で存在感を示しています。

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大川電機製作所の小池 進社長は、2016年の入社後、福島県内の工場にて工場長として従事、その後、2018年に代表取締役社長に就任しました。就任後はさらなる利益拡大に向け、徹底的な現場目線による「付加価値生産性(※1)」の向上に取り組んでいます。今回は、小池社長に大川電機製作所の現在地と未来予想図を伺いました。

 

※1 付加価値生産性とは生産性の効率を示す指標で、企業が生み出す付加価値(=売上高-外部購入費)を総労働時間で割ったもの

目次

    半導体と防衛を中心に、次の時代を切り拓く

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    福島工場(1989年~)

    大川電機製作所は1951年の創業。後継者不在を機に2009年にアルコニックスのグループ会社となり、雇用を守る形で事業承継を実現。アルコニックス側は商社主体から脱却し、ものづくり分野への進出を図る双方にとってwinwinのタイミングでの提携となった。
    福島工場・上名倉工場の新設や増築を重ね、通信機器関連が中心の事業ポートフォリオから半導体関連、航空宇宙・防衛関連へと事業を転換。半導体製造装置関連部品の受注が拡大し、2024年度の売上は5,141百万円。

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    株式会社大川電機製作所
    代表取締役社長 小池 進

    岐阜大学工学部卒。株式会社神戸製鋼所でアメリカ子会社の社長を経て、2016年に入社。工場長や常務取締役を経て、2018年に現職に就任。

    変化の時代に先手を打つ──半導体分野への転換が成長のカギに

    ――大川電機製作所では、売上構成比の中でも半導体分野が大きく伸びています。コロナ禍で一時的に他分野の需要が落ち込んだものの、翌年には過去最高の売上を達成。その牽引役となったのが半導体関連事業だそうですね。

     

    小池社長:半導体は、PCやスマートフォン、家電、自動車など、あらゆる分野に欠かせない部品です。
    当社でも以前から注力していましたが、アルコニックスグループに加わったことでタイムリーな戦略的投資が可能となり、半導体関連部品の生産体制を一気に拡充できました。

    黒字経営の先へ──利益拡大に向け、小池社長が掲げたテーマは「付加価値生産性の向上」

     ――社長就任時に打ち出された経営方針や目標についてお聞かせください。

     

    小池社長:私が就任した2018年は、半導体関連部品の好調を受け、創業以来の黒字経営のさらなる伸長が見込まれていた時期でした。

    一方で、工場長として現場を見ていた頃から、大川電機製作所には「付加価値生産性」において改善の余地があると感じていました。付加価値生産性とは、一人ひとりがどれだけ効率的に付加価値を生み出しているかを示す指標です。この数値を高めれば、限られた人員でもより大きな利益を生み出すことができ、他社との差別化にもつながります。

     

    そうした考えから、社長就任後はまず付加価値生産性を上げることを目標に据え、ボトルネックの改善に着手しました。最初に行ったのは、工程分割からの脱却です。

     

    ――工程分割からの脱却が必要だと思われた理由をお聞かせください。

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    小池社長:工程分割とは、作業工程を細分化し、分業によって生産を行う方法です。大川電機製作所では従来、この工程分割を基本としていました。

    工程分割では、作業者は特定の工程に専念できるため、専門性の向上といった利点があります。一方で、作業の属人化や、次の工程に引き渡すまでに待ち時間が発生するなど、全体の流れが滞りやすいという課題がありました。その結果、製品が完成するまでのリードタイム(所要時間)が長くなる傾向があったのです。

     

    こうした課題を解消するため、まず小型機で一部の定型作業を自動化しました。ファクトリーオートメーションの進展を踏まえ、一定の投資を要しても今取り組むべきと判断したものです。対象となったのは部品の着脱工程で、この結果従来の半分以下の人員で一連の作業を迅速に行えるようになりました。

    次に、中型の機械で多パレット付き同時5軸機(※)を導入し、増産体制を作ることができました。

     

    ※工具と機械を同時に5方向へ移動できる工作機械(同時5軸マシニングセンター)。
    曲面や複雑な形状をあらゆる方向から一度に加工することが可能で、航空機部品や半導体製造装置部品などの精密加工に使われる。さらには材料を複数個セットできる多パレットシステムを組み合わせることにより、連続無人運転による省人化・効率化が可能となる。

     

    属人化を防ぎ、誰もが同じ品質を実現できる体制へ「見える化」を促進

    ――自動化により、従業員がより高度な作業に集中できるメリットもありそうですね。

     

    小池社長:作業が高度になるほど、技術や知識が特定の個人に偏って属人化する傾向があります。属人化を放置すれば、品質のばらつきや生産性の低下、若手人材への技術・技能継承の停滞といった問題が生じかねません。

    専任の技術者が退任したり異動したりすると、その作業をできる人材がいなくなり、機械の稼働が止まるだけでなく顧客にも大変迷惑をおかけすることになります。

     

    こうした課題に対応するため、「体質改善プロジェクト」を立ち上げ、改革を進めました。このプロジェクトの主旨は、機械の操作や作業手順の可視化・標準化を実行し、特定の人と機械が固定化しない体制を構築することです。

    「この機械はこの人に任せておけば大丈夫」という属人的な状態から脱し、誰もがその機械を動かしても品質を担保できるようにした上で、各人材が複数の機械を扱える「多能工化」の状態になることを推進しています。その一環として、ベテラン社員から若手社員への教育の機会を制度化し、年度ごとの計画を立てて継続的に実施しています。

     

    「6S」で安全と品質を守る──信頼を生む現場づくり

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     ――工場長時代に「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」に「作法」を加えた「6S」を掲げ、職場環境の改善を呼び掛けてこられました。この「6S」の取り組みは、品質の維持や向上にどのような効果をもたらしているのでしょうか。

     

    小池社長:「どんなに価値のある製品を作っていても、現場が整理されず、清潔さが保たれていなければ、従業員の集中力が途切れやすくなり、ミスやトラブルが発生するリスクが高まります。そのため当社では、「6S」を常に意識した職場づくりを徹底し、生産性の向上とともに、安全性と品質の強化を図っています。

    従業員一人ひとりが実直に「6S」に取り組んでくれているおかげで、製造業として求められる品質を安定して守れる環境が整ってきました。今では、工場を訪ねてこられたお客さまにも胸を張って現場をお見せできる環境が整いつつあります。

    「6S」は、一度整えたら終わりではなく、継続して磨き上げていくものです。これからも私自身が粘り強く「6S」の大切さを伝え続け、現場の社員が主体的に実践してくれることを期待しています。

     

    一方、営業担当には、製品を販売するだけでなく、「部品がどんな機能を有し、どんな装置に使われ、どのような評価をいただいているか」を現場に伝える役割があります。工場の従業員は直接クライアントと接する機会が少ないため、自分たちが作っている部品がスマートフォンや航空機・人工衛星にどう貢献しているかをなかなか実感できません。営業がその成果や評価を伝えることで、従業員は自分の仕事に誇りを持ち、より良いものづくりへの意欲が高まります。

     

    トップダウン型からボトムアップ型への改革を目指す

    ――今後、どんなことに取り組んでいきたいですか?

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    小池社長:企業が事業を拡大させる局面では、トップダウン型の経営によって明確な方針を示し、スピーディーに組織を動かすことが求められます。大川電機製作所も、そうした体制のもとで成長基盤を築いてきました。

     

    しかし、経営環境が大きく変化するこれからの時代においては、変化に柔軟に対応し、イノベーションを生み出す創造性が欠かせません。そのためにも、今後は現場の声を積極的に取り入れたボトムアップ型の経営も心掛けていきたいと考えています。

     

    現場から柔軟な発想が生まれるよう、多様な人材が活躍できる環境づくりにも力を入れています。
    福島工場では、女性のプログラマー2名が活躍しており、入社5年目でほぼ独り立ちできるレベルにまで成長しました。また、組立工程では女性比率が上昇しており、丁寧な作業が求められるヘリサート工程(ねじ穴に補強用インサートを挿入する工程)などで重要な役割を担っています。

     

    そうはいっても、当社の現場従業員の平均年齢は39歳で、そうした年代の社員が経営陣に意見を伝えるのは決して簡単ではありません。

    そこで、私は福島工場に常駐し、スーツではなく作業着を着て現場に立つようにしています。経営層と現場の距離を縮め、従業員が率直に意見を発信できる関係を築くことが、次の成長を支える土台になると考えています。

     

    アルコニックスグループの力を結集し、営業力強化で「攻めのものづくり」へ挑む

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    ――営業体制の強化やアルコニックスグループとのシナジー創出については、どのような展望をお持ちですか?

     

    小池社長:手のひらサイズから大型部品まで、幅広い製品の切削加工に対応できる技術を持ち、先端技術分野で求められる多様なニーズに応えられることが、当社ならではの強みです。

     

    市場規模の拡大が見込まれるニッチな領域で、こうした独自性を発揮できていることは大きな優位性だと考えています。この強みを活かして事業をさらに成長させていくには、当社の技術を必要とする業界や企業をいち早く察知し、積極的にアプローチしていくことが重要です。いわば、「攻めのものづくり」を実行していく姿勢が求められます。

     

    そのためには、技術力を理解しながら提案できる営業人材の存在が不可欠です。
    現在は、そうした営業社員の採用・育成を進めるとともに、アルコニックスグループの人材基盤を活かし、営業力の高いエース人材に当社へ出向してもらう計画も進めています。

    営業は会社にとって将来の拡大成長を担う大切な役割を持っています。そのため採用を強化したいと思う一方で、なかなか採用につながらないという悩みを抱えていました。

    また、アルコニックスにとっては、当社が強みを持つ半導体や防衛産業という業界の深掘りができ、図面の読める提案型営業という製造業ならではのスキルを身につけられるチャンスでもあります。

    このように、グループ内で人材交流を行うことで、双方の課題解決やスキルアップの機会となると同時に、同じグループ内でも、企業文化や得意とする領域が異なる人材の協力を得ることで、大きなシナジー効果が生まれることを期待しています。

     

    半導体と防衛を中心に、次の時代を切り拓く

    ――最後に、今後の展望をお聞かせください。

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    上名倉工場(2016年~)

    小池社長:今後も事業の主軸は変わらず、半導体関連と航空宇宙・防衛関連の2領域に重点を置いて展開します。

    特に、2030年に1兆ドルに達すると予測される半導体市場に力を入れるべく、生産拠点を増やして対応力も増強していきます。福島工場と上名倉工場に次ぐ第3工場の開設も視野に入れて、検討を進めていきます。

    黒字経営の維持に満足せず、ものづくりの力で成長市場を牽引し、次世代に誇れる会社を作っていきたいと思います。

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