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品質保証を軸に、日本のモノづくりに貢献――M&Aや新規事業によりビジネス領域を拡大│マークテック株式会社 代表取締役社長 西本 圭吾

品質保証をベースに、日本のモノづくりに貢献――キラリと光る日本の技術を世界へ
アルコニックスグループは、非鉄金属の専門商社として培った目利き力を生かし、さらなる収益拡大や業容の多様化を求めて、M&Aを通じ製造業へ進出してきました。
昔ながらの町工場がひしめくイメージだった大田区大森。それが今や高度な技術力で先端産業を支えるハイテク企業の集積地にも変貌しそうな勢いを感じるその大森の一角に、創業70年を迎え、アルコニックスグループで「品質保証を科学するモノづくり集団」として事業を展開するマークテック株式会社があります。
祖業である「非破壊検査」と「印字・マーキング」の2領域で国内トップシェアを維持しつつ、品質保証を軸に事業領域を拡大してきました。自社に研究開発機能を持つ化成品・装置メーカーでありながら、ニッチトップの技術を持つ中小企業の人材不足を受託生産やM&Aで解消し、グローバル展開につなげる取り組みも積極的に行っています。
マークテック株式会社
マークテック株式会社は1955年の創業。企業理念を「品質保証を通して社会に安全と安心を提供する」を掲げ、浸透探傷用化成品メーカーからスタートし、装置開発・製造へと事業領域を拡大してきた。
2016年にアルコニックスのグループ会社となり、安定した資本基盤を得て海外展開や新規事業開拓を加速。アルコニックスにとっても製造業への本格参入を果たす重要な提携となった。
従来の非破壊検査・印字マーキング事業に加え、粉体物性評価や受託生産事業を新たに立ち上げ、積極的なM&A戦略で技術承継にも取り組む。
2025年には試験的な週休3日制を導入するなど働き方改革も推進し、2024年12月期の売上高はマークテックグループで過去最高となる売上高78億、営業利益約6億円(※)を達成している。
※2024年7月にグループ化した東北化工株式会社を含む

マークテック株式会社
代表取締役社長
西本 圭吾
慶應義塾大学卒業後、金融業界で事業会社向け融資や財務・経営企画、M&Aを手掛ける。2010年、マークテック株式会社のMBOに参画し、CFOとして経営企画や海外グループ会社のマネジメント、工場部門などを担当。2015年に代表取締役社長就任。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。「品質保証を通して社会に安全と安心を提供する」という理念を継承しつつ、事業の多角化とM&Aによる技術継承を積極的に推進している。
アルコニックスグループが公開した「長期経営計画2030(以下、長計2030)」では、同社が手掛ける検査事業が重点領域として掲げられており、グループ戦略の一翼を担っています。
「日本のモノづくりの信頼性向上に貢献したい」と話す西本圭吾社長に、技術的な強みの背景や、M&A後のシナジー最大化に向けた取り組み、今後の展望などを聞きました。
国内トップシェアを支える技術力──非破壊検査と印字・マーキングの強み
――アルコニックスグループにおいて、長計2030でも重点領域に貴社の事業が掲げられましたが、マークテックは非破壊検査と印字・マーキングの2領域で国内トップクラスのシェアを維持されています。まず、祖業である非破壊検査事業の技術的な強みについてお聞かせください。
西本社長:非破壊検査とは、製品を破壊せずに対象物の欠陥を検出する検査手法です。当社は「浸透探傷試験(※1)」という非破壊検査で使用する探傷剤の化成品メーカーとして創業し、非破壊検査装置の開発・製造・販売へと事業の幅を広げてきました。現在では「磁粉探傷試験(※2)」と「浸透探傷試験」をメインとした表面探傷の領域で40%超の国内シェア(※3)を獲得しています。
主要顧客は自動車や航空機、プラント、鉄道の車両などの重要保安部品を製造する企業です。小さな欠陥が重大な事故につながるおそれがあることから、品質保証の観点からは欠かせない検査です。
※1 浸透探傷試験:赤色や蛍光体を含んだ特殊な浸透液を製品の表面に塗布し、十分に浸透させてから拭き取って傷を検出する試験方法。鉄やステンレス、アルミといった金属はもちろん、非鉄金属材料にも適用でき、目視より高い精度で効率良く検査ができる。
※2 磁粉探傷試験:磁粉探傷検査は、鉄などの強磁性体を磁化することで、表面または表面近傍にある欠陥を検査する試験方法。そこに磁粉液(検査液)を適用することで、欠陥部分に磁粉が集まり、ひびや欠けなどが目で確認できるようになる。
※3 マークテック調べ

浸透探傷試験風景
――印字・マーキング事業についてはいかがでしょうか。
西本社長:印字・マーキングは、製造・流通・販売におけるトレーサビリティ情報や識別情報を製品に刻み、品質保証を担保する作業です。当社は、鉄鋼素材の表面にある欠陥のマーキングを自動化する装置の開発・製造からスタート。海外のメーカーからの二ーズに応えて装置のグローバル展開を進め、シェアを拡大してきました。
現在は、当社が開発した標準機が中国や韓国、メキシコ、アルゼンチン、カナダなどで活用されています。世界的に安全意識が高まる中、インドやASEAN諸国、中東(西アジア)でも導入が広がりつつあります。
品質保証を軸とした積極的なM&A展開
――積極的なM&Aも特徴的です。どのような方針で取り組まれているのでしょうか。
西本社長:基本的には当社とシナジーを追求するために、品質保証を軸にM&Aを行い、領域を広げてきました。
例えば、風技術センター(2018年グループ化の本田工業と2020年グループ化の風技術センターが2021年に合併)のM&Aにより、それまで当社と全く関りのなかった、建材・建設業界との接点を持つことができました。
この会社は、ソフトウェアによるシミュレーションのみならず、実際の環境を想定した試験や検査を行っています。例えば、強風時に構造物等が周辺に与える影響などを、「風洞実験装置」という人工的に風を起こす装置を用いて検証するほか、ドアやサッシなどの建材メーカーの製品の気密性や防水性などを調べるために、風圧を掛けて気密性能や防水性能を調べる「動風圧・環境試験装置」などを開発・生産しています。
さらに、2025年にグループ化したナノシーズは、粉体(※)物性評価を行っています。
粉体の用途は実に多彩で、EV用電池や化粧品、医薬品、半導体などに使われています。こうしたメガトレンドを追いかけていくうちに、粉体の物性評価に関わることで、これまでとはまったく違う分野に進出することができると考えました。
そこで、まずはナノシーズと業務提携しました。ナノシーズは技術力があるものの営業力に課題があったので、当社でその営業を担う社内ベンチャーを立ち上げ、3年半くらい時間をかけて協業を重ね、最終的にはM&Aで事業を承継しました。これにより、開発・製造にとどまらず、生産した製品を多様な領域に流通させる商社的な動きも可能になっています。
日本には、キラリと光る技術をもった中小企業がたくさんありますが、そうした企業の多くが後継者不足で廃業の危機にあることも知りました。
そこで、品質保証に関連する事業を営んでおり、競争力のある技術がありながら後継者がいない中小企業を対象に、技術を後世につなぐ目的でもM&Aを行っています。
※ 粉体:固体の粒子が多数集まった状態のことを指す。液体や気体とは異なり、「流動性」と「堆積性」という両方の性質を併せ持つ点が特徴。粒子の大きさや形状、表面特性などによって性質が大きく変わるため、精密な評価と制御が求められる。
そのように、品質保証を軸とするM&Aを通じて、少しずつ領域を広げることができています。
――M&Aを行った後の、異なる企業文化の融合ついては、どのような工夫をなさっていますか。
西本社長:M&Aは、社風や意思決定プロセス、価値観などが異なる企業同士の融合です。新たな環境への適応は簡単ではありません。しかし、丁寧にコミュニケーションを重ね、互いの価値観を尊重しながら、新しい組織のアイデンティティを構築することで、当初の期待を超えるシナジーを迅速に生み出すことが可能です。
複数回にわたりM&Aを経験する中で、企業文化の融合をより効果的に進めたいという課題意識が高まりました。こうした背景から、統合プロセスを最適化し、M&Aの成功率を高めるためのPMI(※)について個人的に研究を開始しました。直近でM&Aを行った企業は半年で黒字に転換したケースもあり、合併先の企業の従業員からは「いっしょになってよかった」との声も出ていて、大きな手応えを感じています。
※ PMI:PMI(Post Merger Integration)とは、M&A成立後の企業統合を成功に導くための体系的な手法で、組織文化の融合、業務システムの統一、人材配置の最適化、シナジー創出の早期実現を段階的に進める統合管理プロセスを指す。マークテックでは独自のPMI手法を確立し、価値観共有から統合スケジュール策定、効果測定まで体系化している。
事業領域の拡大──受託事業への挑戦

――近年は品質保証を軸に事業領域の拡大を進められています。具体的な方向性をお聞かせください
西本社長:中国のグループ子会社に、現地でビジネスを展開する日系メーカーよりOEMの相談を受けたことがきっかけに、2022年から化学製品の受託生産ビジネスを新たに始めました。現地のローカルメーカーに依頼するよりも同じ日系の当社グループ子会社の方が安心できるということで、依頼が増えました。
このスキームを日本に逆輸入、当初は認知度が低かったものの、Webマーケティングに力を入れ始めてからはかなり問い合わせが増えてきています。初めは個人の小口相談もありましたが、現在はECサイトで販売されている身だしなみ機器用洗浄液や業務用食洗器の洗浄剤など、大口のOEMでの製造品を中心にさまざまな分野から依頼があり非常に好調です。
受託生産に関するご相談をいただく中で、依頼元企業の方々からは「技術はあるものの後継者がおらず、サステナビリティの観点から、新たな受託生産は受けられないと断られることが多い」「人手不足で受託生産まで手が回らない」といった声を聞くことも少なくありません。
当社は、協力メーカー100社以上とつながっているため、我々が負担できない場合はそうした会社に協力を要請することが可能です。いただいたご相談に対して、はじめからお断りすることは決してせず、まずはしっかりとお話を伺うことを大切にしています。
日本のモノづくりを未来へつなぎたいという強い想いから、たとえ採算面で受託が難しい案件であっても、可能な限り受け入れられる方法を模索する姿勢を貫いてきました。
――受託検査事業も始められたと伺いました

受託検査風景
西本社長:当社が代理店となって、日本とタイでドイツ製のX線CT装置の販売を行っていたのですが、装置がかなりの高額のため、なかなかすぐに購入ができないお客様が多かったんです。
そのようなときに、お客様の初期の開発品や、クレームなどにより全数検査を行う必要がある場合、検査をお願いしたいというニーズがありました。
そこで、受託検査用のデモ機を購入し、受託検査事業は2023年に開始しました。アルコニックスグループの大羽精研でも、別のメーカーのX線CT装置を持っており、当社が窓口になり一緒に受託検査サービスのビジネスを行っています。
働き方改革と人材育成──週休3日制と生産性向上の両立

――自社の技術の承継と人材育成では、どのような取り組みを行っていますか?
西本社長:マークテックは2025年で創業70年を迎えました。組織も人も成熟する中で、次世代に技術と知見を引き継いでいくことは今後の重要なミッションの1つです。そこで、既存人材が自律的なキャリアを描けるよう、階層別研修を実施するとともに、新たに経営幹部(部門長クラス)や次世代リーダー(課長クラス)を社内選抜し、8ヶ月にわたるケースメソッド研修にも着手しました。
私たちが蓄積してきたノウハウや知見を伝えるとともに、自分が組織の中でどのように成長していきたいか、主体的に考える機会になればうれしいですね。
――女性の活躍も目立っているとお伺いしました。

マーケティンググループで活躍する女性従業員
西本社長:マーケティング部門はほぼ女性で構成されています。受託生産を拡大するために採用の幅を広げたことで、品質管理の経験者の女性が転職してくるケースも増えました。従来、理系出身の女性が就職した場合に、品質保証部門に配属される傾向が強かったのですが、マークテックではマーケティングや研究開発といったクリエイティブな部門で活躍できる機会を提供しています。
――採用に関して行っている取組みはありますか?
実は当社は、1980年頃から週休2日制を導入した企業です。当時は採用面でも大きな反響があったと聞きました。そこで、2024年に週休3日制の導入を決定、2025年1月から2ヵ月に1度、第3金曜日を休みにする試験運用を開始しました。
その結果、既存の従業員から非常に好意的な反応があっただけでなく、潜在能力が高くコミットメント力がある人材の採用につながっています。特に子育て中の女性からは「柔軟な働き方ができる環境で専門性を活かしたい」という声が多く、週休3日制が大きな魅力となっています。女性のキャリアはライフステージの影響を受けやすいため、制度や文化を整えて両立を支援していきたいですね。
――勤務日を減らしても同じ仕事量をこなすための工夫はどうされているのですか。
西本社長:勤務日数が減ったかわりに残業が増えるのでは意味がありません。今期から生産性向上プロジェクトを各部門で立ち上げ、プログラミング不要で業務アプリを作成・運用できるクラウドツールを使って業務の効率化を進めてもらっています。
データの共有化を進めたい現場部門と、セキュリティ等の観点で制限をかけたいIT部門との間で、衝突が起こることもありましたが、1〜2年かけた丁寧な対話で解決してきました。これからも社員たちの主体的な取り組みで、現場がよりよく変わってくれることを期待しています。
アルコニックスとの協業効果

――2016年にアルコニックスグループに加わられた結果、どのような成果を感じていますか。
西本社長:私が代表取締役社長に就任した翌年の2016年にアルコニックスグループ入りが決まりました。MBO以前はどちらかというとトップダウンの社風でした。私が経営に参画して以降、意識的に現場の声を聞き、フラットな形でコミュニケーションを取り合える風土へと少しずつ変革を進めていたため、アルコニックスとの融和は比較的すみやかに図れたように思います。
近年では、当社のグループ会社がアルコニックスグループの会社と協業してモノづくりをするケースが増え、M&Aによるシナジーを実感するようになりました。以前から注力していた航空機のMRO(※1)ビジネスも、アルコニックスの成長戦略と方向性が一致しており、今後のさらなる展開が期待されます。
また、アルコニックスが新たに立ち上げたCVC(※2)においても、検査領域の製造ベンチャー企業に関する情報については積極的に声をかけていただいています。こうした取り組みを通じて、気鋭のスタートアップ企業との連携を強化し、新たなビジネス機会の創出につなげていきたいですね。
※1 MRO(Maintenance, Repair & Overhaul):航空機の整備・修理・オーバーホール事業。機体の定期点検から部品交換、大規模改修まで航空機の安全運航を支える総合的なメンテナンス業務。
※2 CVC(Corporate Venture Capital):事業会社が設立する投資ファンドで、スタートアップ企業への投資を通じて新技術獲得や事業シナジー創出を図る仕組み。
次世代技術への対応──ペロブスカイト太陽電池など新分野への展開
――最後に、今後の展望をお聞かせください。

マークテック社・成田工場外観
西本社長:非破壊検査と印字・マーキング領域では、新しい重要保安部品の品質を測定・評価できる製品を提供し、さらなる拡大を図ります。
例えば、従来のシリコン製品に比べて軽量で柔軟性に優れたペロブスカイト太陽電池(※)は、形状をある程度自由に変えられる性質を活かしたさまざまな展開が期待されており、建材業界における品質保証ニーズが高まることも予想されます。こうした新技術にアンテナを張り、領域拡張の足掛かりにしたいですね。
また、受託生産もまだまだ伸びる分野です。品質保証に関連する領域で収益力がある技術を持ちながら、その技術を使った生産まで手が回らない企業、あるいは後継者がおらず技術の継承が難しい企業は少なくありません。そうした企業と手を携えて、日本のモノづくりを支えていきたいですね。
会社の基盤である品質保証を軸に、「モノづくりを科学する集団」として持続的に価値を提供し、製造業のより良い未来に貢献できるよう、努力を続けます。
※ペロブスカイト太陽電池:有機・無機ハイブリッドペロブスカイト材料を用いた次世代型の太陽電池。低温かつ機能性材料のデジタル印刷による製造プロセスにより、フィルム状・シート状といった軽く柔軟な形状を実現できるのが特徴。これにより、従来のシリコン太陽電池では難しかった曲面への設置や、建材と一体化した活用など、新たな用途への応用が可能になる。