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レアメタル・レアアースの専門商社の知見を活かし資源リサイクル事業も手掛ける│アドバンストマテリアルジャパン株式会社代表取締役社長 福田 聡

レアメタル・レアアースの専門商社としてグループ成長戦略を牽引するAMJの現状と今後の展望
2004年、アルコニックスが最初にM&Aを手掛けたアドバンストマテリアルジャパン株式会社(以下、AMJ)は、自動車、航空宇宙などの産業競争力を支えるレアメタル・レアアースの専門商社として、アルコニックスグループの電子・先端材料分野における成長を牽引してきました。AMJは、アルコニックスグループが「長期経営計画2030(以下、長計2030)」で勝ち筋領域と位置づける「半導体」「モビリティ」「次世代エネルギー」にも密接に関わるほか、金属加工バリューチェーンの構築において不可欠なリサイクル事業にも進出しており、循環型社会の実現に向けたグループの取り組みにおいても中心的な役割を果たしていくことが期待されます。
現在は、脱炭素の潮流や品質と供給量の安定化を両立するため、国内外のスクラップ調達ネットワークを拡大し、地政学リスクや価格変動に左右されない供給体制の構築に注力しています。そんなAMJの現状や今後の展望について、福田社長にお話を伺いました。
アドバンストマテリアルジャパン
AMJは2003年に創業し、レアメタル・レアアースを扱う専門商社として事業を拡大してきた。蝶理株式会社の希少金属部門から分社化後、2004年のMBOを経て独立し、同年にアルコニックスグループへ参画。アルコニックスにとっても専門商社M&A戦略の起点となる提携となった。創業当初からシンガポール、北京、モスクワ、トロントなど世界各地に拠点を整備し、タングステン、モリブデン、希土類などの安定供給体制を構築。素材だけでなく、関連設備の輸出入も手掛け、顧客への付加価値を拡大している。2025年3月期は連結売上高約452億円を計上し、日本国内でトップシェアを持つ商品も多いレアメタル・レアアースのリーディング企業として成長を続けている。

アドバンストマテリアルジャパン株式会社
代表取締役社長
福田 聡
早稲田大学理工学部を卒業後、日商岩井株式会社(現:双日株式会社)に入社し、1995年から2001年まで日商岩井ドイツの新材料非鉄金属部門に出向してドイツのデュッセルドルフに駐在。その後、レアメタル・非鉄金属分野でのキャリアを積み、株式会社メタルワンステンレス原料では代表取締役社長を務める。2019年にアドバンストマテリアルジャパンに入社し、取締役副社長を経て2020年6月に代表取締役社長に就任。現在はレアメタル・レアアース専門商社のトップとしてリサイクル事業の強化やグローバル展開を推進。
レアメタル・レアアースを取り巻く現状
――中国が一部レアアースの輸出を許可制にする一方、日米間では南鳥島近海の掘削で協力することが決まるなど、レアメタル・レアアースを取り巻く状況は混沌としています。直近の状況をお聞かせください。
福田社長:レアメタルは自動車、スマートフォン、EVなどの製造に欠かせない非鉄金属を指します。レアアースはレアメタル47元素のうち特定の17元素だけを指し、わずかな量で製品の機能性や効率性を大幅に向上させる性質があります。
いずれも埋蔵量が少ない、抽出の難度が高いといった理由で流通量が非常に少ない上、特定の国や地域に偏在しているため、自国の埋蔵量がほとんどない日本は輸入に頼らざるを得ません。そのため、産出国が政治的・経済的に不安定な状況にある場合、あるいはレアメタルやレアアースの輸出を外交交渉カードとして利用した場合、日本への影響は顕著です。
レアメタル・レアアースは戦略物資としての性質上、国際情勢の影響を受けやすい特性があります。過去には供給元の政策変更により市場が変動した経験もあり、安定調達の重要性が再認識されました。
近年も、国際的な通商政策の動きや主要産業の需要変動により、事業環境に変化が生じる場面がしばしば起きています。
もっとも、こうした状況も落ち着きを見せており、AIに活用されるタンタルをはじめ、モリブデンやバナジウムの収益は安定しています。取引先を中国以外に拡大することで「チャイナプラスワン」の体制構築を進めていく予定です。
南鳥島の周辺海域では米国との共同採掘も進むようですから、今後の動きを注視し、最新の情報をキャッチアップして安定供給を継続していきたいと考えています。
幅広い取り扱い品目と資金力、人材力でレアアースの安定供給を実現

AMJで取り扱うレアアース
――2010年の輸出規制の際にも、翌年の売上を飛躍的に伸ばしています。相場の変動や地政学的な要因の影響を最小限に抑え、レアメタルやレアアースの安定供給を維持できているのはなぜなのでしょう。
福田社長:理由は大きく3つあります。
1つ目は、取り扱うレアメタル・レアアースの品目数が多く、用途が複数領域にまたがっていること。
当社の売上構成は、合金鉄のモリブデンが約40%を占め、タングステン、タンタル、その他の各種レアアースとともに売上の4本柱を構成しています。1点集中でないため、ボラティリティが高い品目の相場を見ながら早期に損切りをしたり、ほかの品目で補ったりすることで安定的な利益が得られています。
また、これらの品目の用途は、その特性に応じて電子材料、電池材料、磁性材料、触媒、高温材料といった複数のカテゴリにまたがっています。そのため、自動車産業の需要が低いときは半導体や通信などの産業向けに販売するなどといったように、産業リスクを避けることができるのです。
2つ目は、グローバルなサプライチェーンにおいて売り手と買い手をつなぐ「トレーダー」の存在です。
当社のトレーダーは10年以上の経験豊富なベテランばかりで、レアメタル・レアアースに関する専門知識や業界知識を豊富に有しています。東京から頻繁に出張して売り手と対面で関係を築いているため、独自のネットワークを持っていることも特長です。
彼らが長い時間をかけて築いてきた信頼に基づく人脈や知見、相場を読む力は、当社の最大にして究極の強みだといえるでしょう。
3つ目は、在庫を持てることです。一般的な商社は、在庫を多く持つことを避ける傾向があります。価格変動があるものなら、なおさらです。しかし、当社はアルコニックスの資金的なバックアップのおかげもあって、ボラティリティを見ながら必要なものを確保できています。そのため、常に素早く安定供給ができるという強みもあります。
重要な人的資源であるトレーダーを育成し、経験と知見の承継に注力

――安定供給の柱であるトレーダーは、どのように育成しているのでしょうか。
福田社長:現在活躍しているトレーダーは、前身の金属商社である蝶理アドバンストマテリアル株式会社時代のレアメタル部門に所属していて、2004年のアルコニックスグループ入りも経て、ここまで残ってくれているメンバーが少なくありません。彼らの多くは、1つの領域に、長く深く関わることによって専門性を高めています。私が日商岩井株式会社や株式会社メタルワンステンレス原料を経てAMJに入社した2019年には、トレーダーが裁量をもって個別の商品の売買を判断する体制が確立されていました。
つまり、安定供給の一翼を担えるトレーダーを育成するには、それなりの年月が必要だということです。
そこで、若手の採用に力を入れ、ベテラントレーダーとともに現場に出てリアルな取引を学んでもらっています。トレーダーの知見というのは現場で経験を積むことによってのみ得られるものも多いのです。当社の礎を築いたといっても過言ではないベテラントレーダーから直接学べる機会は貴重です。現在は、運送、商社、ワイン販売など全く異なる業界からの転職者も増えています。
未来への布石として、少しずつ経験と知見の継承を進めていきたいですね。
――トレーダーの定着率の高さには何か秘訣があるのでしょうか。
福田社長:専門性を尊重し、会社の経営に直結する判断を任せていることは、彼らの大きなモチベーションになっていると思います。
また、全国平均を上回る既存社員の給与引き上げ(※)や、業績付加賞与制度を設けるなどして、「働いた成果」を実感できる仕組みづくりにも注力してきました。これは至って当然のことですが、きちんと従業員に還元していく姿勢を見せることで信頼関係が構築され、会社に対するロイヤリティにつながっているのではないでしょうか。
リサイクル領域では量の確保に向け、グループ連携やM&Aを検討

――近年は、リサイクル事業にも取り組まれています。背景をお聞かせください。
福田社長:事業活動を通じた社会課題解決は企業としての責任です。アルコニックスグループも「長計2030」で示していますが、資源を取り扱う商社である以上、限りある資源の有効活用につながるリサイクルで循環型社会の実現に貢献すべきだと考えました。
具体的には、出資先である台湾の会社でタングステンのスクラップを回収し、超硬工具材料や特殊鋼原料、などに再利用できるタングステンの抽出を進めています。タイの出資企業とも協業し、タングステンやタンタルスクラップの加工・選別から資源抽出、循環へとつなげる取り組みを開始しました。
また、電池を回収し、コバルトやニッケルを含んだ粉末状のブラックマスの回収・再利用にも力を入れています。EVや再生可能エネルギーの隆盛で成長が予想される電池産業への展開には大きな可能性がありますが、我々は後発であり、現時点で回収できる電池はそれほど多くありません。そのため、岐阜県にブラックマス工場を所有している提携先と連携し、資源回収量の確保に努めています。
――リサイクル関連で取り組んでおられる炭化炉の展開についてもお聞かせください。
福田社長:炭化炉は、リチウムイオン電池スクラップなどのレアメタル含有物をリサイクル可能な状態に処理する設備です。高温で廃材・廃部品を炭化させ、資源を回収しやすい形状にすることが可能で、一般的な焼却炉に比べてCO2の排出量を抑えながらリサイクルができます。当社では炭化炉の販売、受託処理も行っており、ESGやGXを踏まえた経営が求められる中で注目され、全国から引き合いも増えてきました。
炭化炉の顧客企業と直に接点を持っていると、レアメタルリサイクル処理だけではなく、意外なところから廃材の種類や処理方法についての理解を深められるという利点もあります。当社も炭化炉を所有し、自前で炭化処理を行っていますので、これを切り口にして積極的に関係性を築き、資源回収量の増加につなげていきたいと思います。
――今後、リサイクル事業を伸ばしていくためには、どのような取り組みが必要だとお考えですか。

E-wasteと称される電子基板屑
福田社長:リサイクル事業を成長させるためには、廃材の回収量をある程度確保する必要があり、М&Aによる事業拡大が必須だと考えています。事業推進を通じて知見を蓄えつつ、優れた技術がありながら事業承継の問題を抱える企業などとの連携を模索していきたいですね。
現在、当社は岐阜県のブラックマス工場と連携して使用済み電池を効率的に回収しているほか、春日部市のスクラップヤードでは電池の回収・選別作業を行っています。また、アルコニックスグループが2025年1月に開設・運営する北九州市の大規模な再生資源ヤードも活用し、リサイクル事業を国内で大きく展開させています。こうしたグループ内の複数の拠点をうまく活用し、将来的には共同会社の設立なども視野に入れながら、回収量の拡大と事業成長につなげていきたいと考えています。
アルコニックスグループ内での今後の役割と展望
――最後に、今後の方向性をお聞かせください。
福田社長:まずは、17種類のレアアースのうち、未着手の素材への進出です。人員をさらに増強し、新たな専門分野を持つトレーダー育成を強化していきます。同時に、チャイナプラスワンを進め、これまで以上に外的要因に左右されにくい体制づくりを目指します。
リサイクル事業では、同じアルコニックスグループである、非鉄金属スクラップの回収を手掛けるアルミ銅センターとの協業を行いたいですね。リサイクル素材に付加価値をつけるという観点からも、グループ連携を通じてレアメタル回収の情報を共有できる意義は大きいと考えています。
こうした取り組みを通じてしっかりと事業基盤を固め、知見とノウハウを蓄積することで、アルコニックスグループの「長計2030」における当社の役割を確実に果たしていきたいと考えています。
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