技術で持続可能なものづくりを海外でも”つなぐ”―― メガキャスト・ギガキャスト時代の金型補修のありかた|東海溶業株式会社

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日本の高度な技術を世界へつなぐ-金型補修の新時代を築く東海溶業の挑戦

アルコニックスグループは、非鉄金属の専門商社として培った知見を活かし、さらなる収益拡大や業容の多様化を求め、M&Aを通じて製造業へ進出してきました。

東海溶業株式会社(以下、東海溶業)は、金型や設備の耐久性を向上させる特殊溶接材料の開発・製造・販売を手がけるメーカーです。近年はダイカスト(※1)製品を製造する金型補修用の溶接材料販売に注力。金型や設備の長寿命化によるコスト削減、および製品の品質と生産効率向上に貢献してきました。 


2025年7月には、愛知県の愛知溶業株式会社(以下、愛知溶業)、三重県の株式会社明和製作所(以下、明和製作所)との3社MOU(基本合意書)を締結。金型の寿命延伸が効率的な生産と製品の質向上につながることを海外に周知し、日本の高度な金型補修技術を世界へつなぐ目的で、メガキャスト・ギガキャスト(以下、メガ・ギガキャスト)(※2)対応体制の構築を進めています。

 MOU締結の狙いや効果を中心に、同社の歩みや強み、今後の展望を大竹社長、技術部兼製造部の大久保部長、営業部の曽我課長に聞きました。

※1 ダイカストとは、溶かした非鉄金属を金型に注入し、同一の品質の製品を高精度かつ短時間で作り出す技術のことを指す。同じ品質の製品を数秒単位で繰り返し作ることができ、量産に適していることから、自動車部品をはじめ精密機器や産業機器といった基盤産業で多く使われている
※2 メガキャスト・ギガキャストとは、従来は複数の部品を溶接・組立てていた自動車のパネルやボディなどの部品を、大型の鋳造機で一体成形する革新的な製造技術
目次

     

    東海溶業株式会社
    1962年の創業。金型・設備の耐久性向上を実現する肉盛溶接材料の専門メーカーとしてスタートし、特殊溶接材料のパイオニアとして事業を展開してきた。
    2015年にアルコニックスグループとの資本業務提携を開始し、安定した資本基盤と販売ネットワークを獲得。これを契機に、従来のプレス金型分野に加えダイカスト金型補修分野へと事業を展開し、海外市場開拓を加速させた。現在は環境規制に対応したコバルトフリー特許製品の開発も手がける。溶接材料の海外売上比率は約40で、海外案件が増加中。2025年3月期の売上は7.7億円。

    東海溶業様写真2.jpg

    東海溶業株式会社
    代表取締役社長 大竹 直樹(写真・中)

    1996年にアルコニックス株式会社に新卒入社。2012年5月から名古屋支店に異動し、営業職として東海溶業を担当。同社の材料仕入れ全体の60~70%がアルコニックス経由という深い取引関係を築く。2015年、東海溶業がアルコニックスグループの子会社となった際に同社に出向、営業本部に所属。前オーナー(当時社長)の引退に伴い、2022年に代表取締役社長に就任。海外営業、ダイカスト金型補修材料市場の開拓を主導。グローバル展開戦略を推進し、海外市場における補修技術の普及に取り組んでいる。

     

    技術部 兼 製造部 部長 大久保 政範(写真・右)

    ダイカスト金型用溶接材料の開発を中心に担当し、特にコバルトフリー特許製品の開発に従事。溶接材料の研究開発、ダイカスト金型補修技術、海外市場向け材料ニーズの収集と新製品開発を担当する。海外市場における補修ニーズの調査・分析、新たな溶接材料の開発提案を推進している。

     

    営業部 課長 曽我 哲也(写真・左)

    約17年にわたり海外営業を担当し、市場拡大に貢献。アルコニックスグループおよび型技術協会の人脈を活かし、プレス金型・ダイカスト金型分野を中心に、日系および欧米自動車メーカー、プレス金型メーカー、ダイカストメーカーとの取引を拡大。

    アルコニックスグループへの参画と戦略転換

    ――東海溶業は1962年の創業で、60年以上の歴史がある企業です。アルコニックスグループに参画される前の事業内容について教えてください。

    大竹社長:当社は創業以来、金型や設備の耐久性向上に貢献する特殊溶接材料の製造・販売、および溶接材料を使った施工を手がけています。

    創業当初は、自動車産業で使われるプレス金型の溶接材料を中心に開発・販売しており、小ロット多品種の生産に対応できる体制で、多様な顧客ニーズに応えられることを強みとしていました。プレス金型とは、金属材料のプレス成形に使う型のこと。自動車であれば、ボディやサスペンション、ドアなどのパーツを作るのに使われています。
    東海溶業では、技術部門と営業部門が連携し、自動車メーカーのプレス金型の溶接規格にスペックインすることで、業界をリードしてきました。

    ――2015年のアルコニックスグループ参画が大きな転機だったそうですね。

    大竹社長:そうですね。アルコニックス(ALCONIX)は、社名の「Al」が「アルミ」の元素記号にちなんでおり、アルミに強い会社なんです。アルミ製品からリサイクルまで取り扱い、ダイカスト分野では大手ダイカスト関連企業とも非常に太いパイプを持っています。当社は、アルコニックスとの資本業務提携を機に、ダイカスト産業にも展開する方針を決定。以降10年は、総力を挙げてダイカスト領域に取り組んできました。

    大久保部長:具体的には、ダイカスト用溶接材料の開発に集中しました。特にコバルトフリーの特許製品を開発し、環境規制物質を使わない材料として市場に投入しています。その結果、国内外のダイカスト金型市場で採用が拡大してきました。溶接材料の海外売上比率は約40%に増えています。

    ――ダイカスト産業への注力を決めた背景には、アルミ市場の拡大があったそうですね。

    大竹社長:自動車の軽量化が進み、鉄の3分の1の軽さであるアルミが多く使われるようになりました。長年自動車産業に携わり、次世代モビリティにおいてそうした動きがあることは把握していましたから、アルコニックスとの提携はアルミ関連事業に注力する良いきっかけになりましたね。

    曽我課長:私も、長年海外営業に携わる中、アルミの需要が世界的に拡大していく様子を目の当たりにしていました。そのため、今後の市場変化を見据え戦略的にダイカスト産業にも展開するという大竹社長の方針は正しいと感じたのです。日本の金型技術の発展を目指す技術者、経営者、研究者などが集う一般社団法人 型技術協会などで人脈を作り、海外市場への展開を支援してもらいながら溶接材料の拡販に取り組むことにしました。

    3社MOU締結の理由

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    ――2025年7月に、愛知溶業、明和製作所との3社間でメガ・ギガキャスト金型補修に関するMOUを締結されました。まず、この背景についてお聞かせください。

    大竹社長:今回のMOUの背景には、当社が2015年にアルコニックスグループに参画して以降、ダイカスト領域へ事業を展開し、近年はメガ・ギガキャストに伴う超大型金型の補修需要を見据えてきた経緯があります。テスラが先駆けて採用し、車体の製造工程を大幅に簡素化したほか、部品点数の削減とコスト低減も実現しました。日本でもトヨタをはじめ各社が導入を進めており、今後の自動車製造における重要な技術トレンドとして注目されています。この技術革新に伴い、超大型の金型の補修・延命技術が、新たな成長市場として急浮上しています。

    ――3社連携はどのように実現したのでしょうか。

    大竹社長:先に愛知溶業と明和製作所の2社間で中国・北米における金型補修事業での協業についてMOUを締結していたのですが、発表を受けて当社から参入の意思を示しました。先行している2社の技術力と当社が培った海外販路を掛け合わせることで、さらなる進展が望めるのではないかと思ってのことです。

    ※MOU締結については下記でも詳しく解説しています。

    【アルコニックスグループ】東海溶業株式会社、愛知溶業株式会社と株式会社明和製作所の 3社でメガ・ギガキャスト溶接補修の技術連携MOUを締結、3社連携でソリューション力強化 | アルコニックス株式会社

    MOUにおける各社の役割

    ――今回の連携においてそれぞれどのようなポジションを担うのでしょうか。

    大竹社長:東海溶業は、ダイカスト金型補修用の溶接材料を製造・販売しています。国内外で実績があり、コバルトフリー特許製品など高付加価値材料を提供できます。海外代理店網も活用可能で、在庫配置の工夫による短納期対応も強みです。そうした専門的な溶接材料と培ってきた海外販路を活用していきます。

    さらに、日本国内で金型補修事業のトップクラスのメーカーである愛知溶業の高度な補修技術と、金型メーカーとして国内外で豊富な実績を持つ明和製作所の金型製造技術や、海外拠点を掛け合わせることで、協力体制を敷き、国内外のメガ・ギガキャスト対応体制の構築を進めたいと考えています。

    海外で見た「補修しない文化」という課題

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    中国の展示会にて

    ――貴社事業の海外展開において、どのような課題があったのでしょう。

    曽我課長:中国やほかの地域のローカルメーカーからすると、そもそも補修する技術が不足しているんです。欧米でも「修理はリスク」という考え方が一般的です。

    ――技術的な課題もあったのですね。

    大久保部長:日本の技術には、物を補修して大切に長く使う文化が基底にあります。とはいえ、補修は万能ではなく、型の使い方や日常のメンテナンスなどが噛み合ってこそ、寿命の延長につながります。そこが揃っていないと、補修しても短期間で再び使えなくなるケースもあります。

    大竹社長:また、(メガ・ギガキャストの)金型の価格は、非常に高額にも関わらず、補修しないことによるコストロスが可視化されていない点も問題です。

    大久保部長:補修の仕方が悪いので、修理してもすぐ使えなくなるのです。そのため「直す意味がない」となってしまうんですね。しかし、きちんと補修すれば金型の寿命が延び、今まで1つの金型につき1,000個しか作れなかったのが2,000個、3,000個作れるようになるでしょう。このメリットを実感してもらう必要があります。

    大竹社長:加えて、正しく補修すれば製品の品質が安定することもメリットです。顧客の信頼を得るために日本品質を目指す海外企業は、この点にも魅力を感じるのではないでしょうか。

    曽我課長:国内の日系カーメーカーやダイカストメーカーについていく形で、一緒に市場を広げてきました。しかし、海外は裾野が広く、品質のばらつきもあって、採用はされても安定しないため、補修事業を現地でやることで、ローカル企業への提案を広げていきたいと考えています。

    海外展開は、「やって見せる」ことで価値を高める

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    クライアントに補修作業を見せている様子

    曽我課長:2025年11月に、私と大竹社長で中国の南京の近くにあるクライアントを訪問しました。愛知溶業の溶接担当者にも同行してもらい、現地で実際にやって見ていただいたのです。すると「こんなに綺麗にできるんですね、仕上がりがとてもいいですね」と現地の担当者に驚かれました。結果として、生産ラインに試験導入していただくことになったのです。

     ――海外の方にとって、金型を補修して使い続けることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

    大竹社長:製造業の世界では「生産をちょこっと停止させる」を意味する「チョコ停」という言葉がよく使われます。実際に、金型が傷むと生産が一時的に停止してしまうのです。しかし、金型の寿命が長くなり、我々の溶接材料を使って修理すると傷みを抑え、そのチョコ停を減らすことができます。生産を計画どおりに進められるだけでもコストダウンにつながるでしょう。

    大久保部長:傷む箇所はほとんど決まっていますが、そこを当社の溶接材料で補強すると、弱いところが強くなるのです。きちんと補強すると不具合が出にくくなるため、傷んだ金型を取り外して入れ替える事態も減らせます。金型のコストだけでなく、生産効率の面でも大きなメリットがあるのです。

    ――今後の海外展開はどのようにお考えですか。

    大竹社長:まずは中国を起点に、限定した地域から始めて、そこから溶接修理を体験してもらいます。溶接材料の普及にもつながりますし、そこで使う材料も今後増えていくでしょう。明和製作所の拠点がある中国・メキシコ・タイ・インドネシアから進めていきたいと考えています。

    曽我課長:中国ではEVを世界的な販売価格の2分の1、3分の1で売る一方で、「安かろう悪かろうはダメ」という意識の高い会社もあり、二極化しています。

    大竹社長:日本の金型技術を取り入れ、中国から欧米に進出しようとしている会社も少なくはありません。日本企業と手を携え、海外展開を通じて技術を高めていくことに意欲的な会社もあるので、そのような方たちとともに取り組んでいきたいと思っています。

    大久保部長:海外で販路を広げていくためには、何よりも情報が大事ですね。海外ユーザーの具体的なニーズだけでなく、そこに金型の補修が貢献できる余地があるか、どのような溶接材料が必要となるかをいち早く知り、有利なポジションを取っていきたいと考えています。今後は、海外ユーザーのニーズに応えられる新しい溶接材料を提案して、金型の補修レベルを底上げするべく取り組んでいく予定です。

    「技術をつなぐ」という使命

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    東海溶業社の製品

    ――最後に、今後の展望をお聞かせください。

    大竹社長:現地で金型の補修技術が定着し、担い手が育たなければ、補修する文化の普及も進みません。技術の継承と人材育成を含めて、事業として継続できる形をつくっていきたいと考えています。 

    アルコニックスグループでも、パーパス・ビジョンで「つなぐ」をキーワードにしています。我々の使命とリンクしていると感じていますね。
    グループ内では各社がそれぞれ、ダイカストの原材料、製品、検査機器などを取り扱っています。当社の金型事業は、そうした事業の裏側を支える、いわば縁の下の力持ちのような位置づけにあります。表舞台に出る機会が少ない分野ではありますが、この裏側の技術をしっかりと継承していくことで、産業全体、そしてアルコニックスグループ全体の前進を支えられると考えています。

    ■【参考】アルミダイカスト産業におけるアルコニックスグループの役割

    東海溶業様図版再修正.png

    アルコニックスグループは、非鉄金属の製造から流通までを担う総合ソリューションプロバイダーとして、アルミ地金(※)の供給から、バリ取りなどの追加加工、品質検査、さらには使用済製品の回収まで、ダイカスト産業に広く関わっています。

    ※ アルミ地金とは、アルミニウム製品の原料となる金属の塊を指す。加熱して溶解し、鋳造や加工を経て、自動車部品や各種産業製品の材料として用いられる

     

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