なぜ非鉄金属の商社が医療業界に?商社の知見×製造の技術で医療分野に革新を!「Medtec Japan」取材記

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画像左から:大羽精研 森さん、 チタン・新素材部 木下さん

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アルコニックスグループは、商社流通機能と製造機能を併せ持つ企業で、多くの産業に関わる素材の調達、部品の製造を行っています。

アルコニックスは、2022年11月に医療向けのチタン展伸材(てんしんざい、圧延などで延ばされた金属素材)の欧州向け輸出を手掛けるDKSHマーケットエクスパンションサービスジャパンの金属製品事業を取得し、チタン展伸材のラインナップを拡充。

加えて、グループ企業の大羽精研においては、同社の技術を活かせる新たな市場として医療に着目、将来の海外展開も見据え、2021年に医療機器品質マネジメントシステムISO13485を取得しています。

さらに、医療領域の可能性に着目し、2025515日に公開した長期経営計画2030にて、新たな注力事業の候補としています。

目次

    そうした中、医療領域において、チタン製のインプラントに関する事業を行う チタン・新素材部と大羽精研が、東京ビッグサイトで202549日(水)~11日(金)の期間に開催された医療機器の設計・製造に関する展示会・セミナー「Medtec Japan」に出展したという情報を聞き、取材に向かいました。

    MedtechJapan看板.jpg

    医療用インプラントの世界市場は拡大予測

    医療用インプラントの世界市場規模は、2025年に1,216億米ドルになるとみられ、 2032年には1,964億米ドルに達すると予測されています。※1

    アルコニックスグループの次の注力事業候補となった医療領域の中で「チタン製インプラント」に関する事業を行うアルコニックスと大羽精研。

    アルコニックスは一般社団法人 チタン協会の正会員に、大羽精研は賛助会員に加盟していることから、「Medtec Japan」のチタン協会のブースに共同で出展。大羽精研が手掛けるチタン製のインプラントを展示しました。

    Image (2).jpg

    そこで、展示会場にいたアルコニックス チタン・新素材部に在籍する木下さん、大羽精研で営業を担当する森さんのお話を基に、なぜチタンがインプラント素材に使われているのか、チタン製インプラント製品における大羽精研の事業の強みについて解説します。

    1 市場調査レポート: 医療用インプラントの世界市場:業界分析、規模、シェア、成長、動向、予測(2025年~2032年)

     

    木下さんが所属するチタン・新素材部の記事はこちら

    洋上風力発電+水素!新分野へ切り込むチタン・新素材部 | アルコニックス株式会社

     

    医療用インプラントにチタンが使われている理由

    まず、インプラントとは歯科治療に限定せず医療器材を人の体に埋め込むことの総称で、主に骨の治療に対して用いられます。

    また、チタンは

    ・軽い

    ・さびにくい

    ・強い

    ・金属アレルギーを起こしにくい

    という特徴があることから、インプラント製品に広く利用されてきました。

    浅草の浅草寺の瓦にもチタンが使われており、日本瓦からチタン瓦に吹き替えることで屋根の重量を約1/5に軽減されたそうです。

     

    チタン製品の製造は、原料となるチタン鉱石を輸入し、スポンジチタンを精製、金属チタンの塊になり、そこからさまざまな製品に使われます。

    航空宇宙開発からプラント・建築・身近な製品など、あらゆる分野で用途の可能性を拡げています。

    日本はスポンジチタンの製造において、世界随一の技術を持っており、アメリカも日本からスポンジチタンを購入しているそうです。

    スポンジチタン.jpg

     それに加え、インプラントは体内に埋め込むという性質上、繊細な加工技術が要求されます。

    非鉄金属領域でのアルコニックスの知見と、大羽精研の高精度高付加価値部品の製造技術がシナジーを生み、チタン製インプラントの加工依頼が増加しています。

    製造技術で顧客にさまざまな設計提案が可能に!

    大羽精研は医療用メーカーからの依頼に基づき、部品を製造・納品しています。

    強みの一つは製品のサイクルタイム※2の速さ。

    例えば、固定するネジの特殊な加工なども短納期が実現するだけでなく、品質を担保した上で比較的安価に仕上げることが可能になります。

    また、これまでの製造過程で培った技術を用いて、クライアントである医療機器メーカーから持ち込まれる製品の設計についても、さまざまな改善提案を行うことができます。

    さらに、出来上がった製品が図面通りになっているかを測定する測定機器についても3次元測定機を中心に充実しており、製品の正確さも担保することができるという強みも顧客からの信用につながっています。

     

    ※2 1つの製品の工程開始から完了までの1サイクルに対して実際にかかる時間

     

    終わりに

    大羽精研の技術力で製造されるチタン製のインプラントと、商社の知見を活かした販路の拡大というアルコニックスグループのシナジーを生かした、今後の事業展開が楽しみです。

    アルコニックスグループは、非鉄金属の流通・製造機能の経験値を活用し、医療業界の発展に貢献していきます。